
「発達が気になる子」の特徴と対応法とは? 2つのキーワードでわかりやすく解説
親の理解がカギ
小さなお子さまを育てている皆さん、ふと「うちの子、もしかしたら発達が遅れているのでは?」と心配になること、ありませんか?
または、保育園の先生から「発達の遅れが気になるので、療育に相談してみては?」と言われた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、健康診断や小児科の先生から何らかの指摘を受けたことがある方もいるでしょう。
「発達に遅れがあるかも」と言われると、最初は受け入れたくない気持ちが湧いてくるものです。しかし、そんなときこそ、親の理解と対応が非常に大切です。
この記事では、自分の子の発達の遅れが気になる、もしくは言われた親御さんで、どうしたらいいかわからない、そんな方に今後の対応のヒントを解説していきます。
先生からの指摘がもたらす不安
保育園や幼稚園の先生、小児科の先生が「発達が気になる」と伝えるのは、決して保護者を責めているのではなく、子どもがより良い成長をするためのサポートを考えてのことです。
どんなときに、園の先生が「発達の遅れが気になる」かというと、「この子は小学校に進学しても集団生活でうまくやっていけるだろうか?」と心配に感じる場合です。
小学校で過ごす時期は、将来に向けて必要な準備期間です。保育園や幼稚園と比べ、より大きな集団生活や勉強についていくための準備が求められます。
しかし、もし小学校に進学してから「なぜか友だちと馴染めない」「勉強についていけない」となれば、自己肯定感が低くなり、子どもが感じる生きづらさが増していくでしょう。その前に、早期の理解とサポートが大切です。
気をつけたい言葉
「もう小学生なんだから、いいかげん自分でできるようにならないと」「どうしてこんなこともできないの!」
といった理解の無い言葉は絶対に避けましょう。こうした言葉は、子どもにプレッシャーを与え、自己肯定感を傷つける原因になります。
子どもの発達の遅れが気になるなら、まずは親が理解し、サポートすることが必要です。必要に応じて専門家に頼ることもありますが、まずは子どもにとって、何より身近にいる親の理解が最も大きな力になります。
キーワードで解説!発達が気になる子の特徴と対応
今回は、発達が気になる子どもの特徴と、それにどう対応すべきかを、作業療法学博士である野藤弘幸さんが挙げる2つのキーワード、①注意力、②感受性を元に解説していきます。難しい専門用語は使わず、わかりやすくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
特徴がわかったとしても、生まれながらの特性は変わらない
前提として、これらのキーワード、「注意力」や「感受性」は生まれながらの特性であり、本人の努力や意思でコントロールすることができないということを理解してあげましょう。
前述したような「もう小学生なんだから、いいかげん自分でできるようにならないと」「どうしてこんなこともできないの!」といつまでも怒るのは、子どもにとっても親にとっても不幸だということです。
しかし、適切なサポートを繰り返し行っていけば、スピードは遅かったとしても、子どもは徐々に日常の社会生活に適応できるようになっていきます。
キーワード① 注意力
「注意力」とは、単に集中している状態ではなく、同時に複数のことに注意を払いながら、段取りよく考え実行する力です。これを日常的な行動に例えるなら、例えば「段取り力」とも言えます。
例えばインタビューを受ける際に、姿勢を整え、質問を理解し、それに答えながら、自分の経験を思い出して話すというように、複数の事柄に同時に気を配りながら、ひとつの行動を取ることが求められます。
集中しているときは、複数の考えを整理して物事を進めようとしています。逆に注意力が散漫な場合は、物事を順番に実行する力が足りず、気が散って次々に思考が移り変わってしまう状態です。
子どもにとって注意力が必要な活動とは?
子どもにとって、例えば「着替え」を行う場合も、これが注意力を必要とする活動です。
【朝の着替えの手順】
- パジャマの上を脱ぐ
- パジャマのズボンを脱ぐ
- シャツを着る
- ズボンを穿く
- 靴下を履く
それぞれの工程にはさらに細かい段取りがあります。順番を思い出しながら一つずつ行動することは、注意力が育まれている証拠です。
逆に注意力が足りないと、生活や遊びの中で集中できないことが多くなります。周りのことに気を取られやすい、物事を一つのことに集中して行うのが難しいという特徴が見られるかもしれません。着替え、片づけ、出かける準備などの指示を出してもやらずに他のことをしている子は、注意力が狭いタイプかもしれません。
注意力が足りない子への対応のポイント
では、注意力が狭い、つまり段取りを立てるのが苦手な子に対して保護者はどうしたらよいでしょうか。
まずは一緒にやってあげること、サポートしてあげることです。何度も繰り返しサポートすることで、子どもは何をすればいいかを徐々に覚えて、その子の能力の範囲で、できることが増えていきます。
よくある困りごと、癇癪とはどういう状態?
幼児期の子どもの行動で親が悩むものに、「癇癪(かんしゃく)」があります。
癇癪(かんしゃく)は、子ども自身がが考えた段取りどおりに進まなくなったときに、解決する方法や別の手順を思いつけない状態です。
例えば、積み木で遊んでいるときを考えてみましょう。
積み木を積み上げていた場合、自分の腕があたったせいで崩れてしまったとき、崩れた部分から再度積み上げて、当初の段取りどおりに進められる子は注意力が広いタイプです。
一方で、注意力が狭いタイプの子は、崩れたとき、どうしていいかわからず、目の前の積み木を投げたり、「もういい!」とやめてしまいます。
癇癪への対応方法は?
このとき、親はその行動に注目するあまり「積み木を投げてはダメでしょ」とつい言ってしまいますが、大人が怒ってもなおりません。
子どもにとっては自分の能力でコントロールできない結果として起きたことであることを理解してあげましょう。
そして、落ち着くまで見守りながら待ちます。「どうしたの?」と説明を求めたり、「こうしたらできるよ」とアドバイスしても、興奮しているときは耳に入りません。逆にイライラして興奮してしまうこともあります。
気持ちを切り替えるまで待つことを繰り返すことで、子どもは自分の感情をコントロールすることを学んでいきます。
キーワード② 感受性
感受性のしくみ:外と内のバランス
感受性には大きく分けて二つのタイプがあります。
- 一つは外部からの刺激、つまり見る、聞く、触るといった感覚を通じて感じ取るもの
- もう一つは身体の内側からくる感覚、例えば空腹や眠気などの生理的な感覚です
この2つがどれくらい強いかは、子ども一人ひとりで異なります。重要なのは、この「外の感受性」と「内の感受性」のバランスがどうなっているかです。
外部からの刺激(光や音など)ばかりを感じ取ってしまうと、体内の感覚(眠い、お腹が空いたなど)は感じにくくなります。極端に言うと、外側の感受性が強すぎると、自分の体内の信号を認識するのが難しくなり、眠れなかったり、空腹に気づかなかったりするのです。
子どもの感受性に合わせた対応の例
子どもの感受性に合った対応をすることで、日常の「困りごと」を減らすことができます。以下は、外部の刺激に敏感な子どもに見られるよくある困りごとと、その対応策です。
例)寝かしつけに時間がかかる
- 光や音が気になって寝つきにくいことがある
このような子どもに対しては、寝室の光を遮ったり、周囲の音をできるだけ減らしたりすることが有効です。例えば、寝かしつけ前に部屋を暗くして、音の少ない環境にすることがポイントです。
例)食べ物の好き嫌いが激しい
- 見た目や触感に敏感な子どもは、食べ物の形や色を受け入れられないことがある
このような好き嫌いに理由はありません。この場合、無理に食べさせようとするのではなく、その子が食べやすい形にしたり、徐々に新しい食べ物に慣れさせたりする方法が大切です。無理強いせず、食事の楽しさを感じてもらうことが基本です。
例)集団行動で急に部屋を出ていく
- 音や視覚に敏感な子どもは、他の子の遊びの音や動きが刺激になり、突然部屋を出てしまうことがある
こうした行動が見られる場合は、その子の感覚について周囲の大人や保育園に特性を伝え、環境を調整することが大切です。防音のイヤーマフを使うなど、適切な対策を講じましょう。
感受性が強みになることも
感受性が強いことは、実は大きな強みになることがあります。視覚や聴覚に敏感な子どもは、その能力を活かして得意な分野に伸ばすことができます。
例えば、視覚的に優れている子は、細かい観察や記憶に長けていることがあります。聴覚が優れている子は、音楽や楽器で才能を発揮することもあります。
家庭ではわかりづらい
これまで挙げた事例はほんの一部です。注意力(段取り力)が狭かったり、感受性のバランスが普通の範囲と違うと、子どもは日常の様々な場面で常に困りごとを抱えています。
しかし、家庭では他の子と比べられることがないので、「発達の遅れ」に気づきにくいことも多いのです。
もし、少しでも気になったり、保育園や幼稚園その他から「お子さんの発達の遅れが気になる」と言われたときは、療育に相談するとよいでしょう。
療育とは、障害を持つ子どもやその家族を支援する取り組みで、子どもの成長や自立を促し、社会参加を支援するもので、相談する機関が各市町村にあります。
困ったときは専門家に相談を
今回は、あえて専門用語を使わず2つのキーワードで簡単に解説しました。 ここまで読んでみて、やはり気になるという方は、療育や発達支援機関に相談してみましょう。
その前にもう少し自分で詳しく知りたいという場合は、「感覚統合」について調べてみるのもいいでしょう。 今回の記事では詳しい説明はしませんが、以下は、日本感覚統合学会が作成した簡易的なチェックシートです。 お子さんに当てはめて、いくつ該当するかチェックしてみましょう。
- 滑り台など、滑る遊具を怖がる
- 非常に長い間、自分一人であるいは遊具に乗ってぐるぐる回転することを好む
- 粘土、水、泥、砂などの遊びを他の子供よりも過度に好む
- 粘土、水、泥、砂などの遊びを嫌がる
- 手でなんでも触ってまわる
- 抱かれたり、手を握られたりすることを嫌う
- 洗面・洗髪・散髪・歯磨き・爪切り・耳かき等を嫌がる
- そばに人が近づくと、すっと逃げる
- 呼びかけても、振り向かないことがある
- 理由もなく周囲をうろうろしたり、動き回ったりしている事が多い
- いろいろな物が見えると、気が散りやすくなる
- 座っている時や遊んでいる時に、繰り返し頭を振ったり体全体を揺らす等の癖がみられる
- つま先歩きをすることが多い
- 固い物(食物以外)を口に入れ、噛んでいることがある
- 偏食がある
- 特定の音に非常に過敏な反応をする
- 回転物(車のタイヤの回転、換気扇、扇風機など)を見つめることを好む
- 転びやすかったり、簡単にバランスを崩しやすい
- 体がぐにゃぐにゃしていて、椅子から簡単にずり落ちそうな座り方をしている
- 風船や動物などを、そっと握ることができず、握り方の加減がわからない
あくまでも目安として参考にしてみてください。発達障害の特徴と感覚統合の問題はすべてが共通するものではありません。
一方で、過剰に心配する必要はありませんが、明らかに該当するのに専門機関へ相談に行かず、「うちの子はだいじょうぶ」と自分に言い聞かせるだけでは、お子さんのためにも、親のためにもなりません。
お子さんが将来大きくなったときに、社会に適応しながらお子さんが楽しく生きていくために、これからの対応を考えてあげてください。