
お子さんの困った行動、なぜ?~子どもの「こころの発達」とは
小さなお子さんが日々成長する中で、「この行動はどういう意味があるの?」「どう対応すればいいの?」と、お子さんの困った行動に悩むことはありませんか?
本記事では、「こころの発達」や「こどもとの関わり方」について、保育園の先生方が日々の保育の中で意識していることを、親の皆さんにもわかりやすくお伝えします。
こころの発達とは?
「こころ」と聞くと、感情の動き(情緒面)をイメージする方も多いかもしれません。でも、実は「こころの発達」には大きく分けて2つの側面があります。
- 認知面(考える力、判断力、理解力、段取り力など)
- 情緒面(気持ちの動き、意欲、共感力など)
例えば、お子さんが何か新しいことに挑戦するとき、「どうやったらうまくできるか考える力(認知面)」と「やってみようという意欲(情緒面)」がどちらも大切になります。
認知面 ~「考える力」の仕組み~
お子さんの「考える力」は、さまざまな感覚を受け取り(インプット)、それを処理し、自分なりの方法で表現する(アウトプット)ことで発達します。
① どのような感覚が入るのか?(In put)
- 視覚(目で見て理解する)
- 聴覚(音を聞いて認識する)
- 嗅覚(においを感じる)
- 触覚(手触りを感じる)
- 味覚(味を感じる)
② 情報処理(Processing)
- 操作(手を使って試してみる)
- 思考力(考えて答えを導く)
- 想像力(イメージする力)
- 判断(どちらを選ぶか決める)
③ どのような表出が可能か?(Out put)
- 運動(体を動かす)
- 動作(手や指を使う)
- 表情・ジェスチャー(顔の表情や身ぶり)
- ことば(言葉で伝える)
このように、認知面の発達は「感じる → 考える → 表現する」という流れで成長していきます。
情緒面 ~「気持ちのエネルギー」~
お子さんの感情は、活動への意欲や取り組み方にも大きく影響します。
- ポジティブな感情(ワクワク、楽しい、嬉しい) → 「正(プラス)」のエネルギーとして、やる気を引き出す
- ネガティブな感情(不安、悲しい、怒り) → 「負(マイナス)」のエネルギーとなり、行動をためらったり、やる気を失うことも
ポジティブな感情が増えると、「やってみたい!」という気持ちが育ち、新しいことへのチャレンジにつながります。一方で、ネガティブな感情が強くなると、「どうせ無理…」と自信をなくしてしまうことも。
お子さんの気持ちを大切にしながら、無理のないチャレンジを増やしていくことが、心の成長につながります。
子どもに合った関わりが大切
お子さんの発達には「素質」と「環境」が影響します。つまり、「素質=認知特性のタイプ」と「環境=周りの関わり方」が両方大切なのです。
特に、お子さんの発達のペースや特性に合ったサポートをすることで、「できた!」「楽しい!」という成功体験につながり、学ぶ意欲が育ちます。
逆に、難しすぎる課題や合わない関わりが続くと、「できない…」「やりたくない…」と自信を失う原因になることもあります。
「言うことを聞かない」=「困っているサイン」かも?
「何度言っても聞かない」「わがままなのかな?」、その行動には「理由(その子なりの認知の特性)」があるかもしれません。
例えば、
- 指示が難しくて理解できない → 伝え方を工夫する
- 環境の刺激が強すぎて集中できない → 静かな場所で話す
- 感覚の違い(大きな音が苦手など)で不快に感じている → 配慮した環境を作る
このように、認知の過程に問題があることにより、「困っているサインかも?」と考えてみることで、お子さんが安心して行動できる工夫が見えてきます。
園の先生が親の関わりと支援で意識していること
子育ての「ペース」と「学びのスタイル」は親それぞれ
お子さんの認知の過程に問題がある場合、つまりお子さんの発達が気になる場合、保育園の先生は、お子さんや周りの人たちが困っているかもしれないことを、なんとかして親に伝えようとします。
そのとき、お子さんだけでなく、親も理解の仕方やペースがそれぞれ違うことを意識して支援を試みようとしています。
例えば親によって、
- すぐに専門機関に相談する人
- じっくり考えてから相談を始める人
- 集団で学ぶ方が理解しやすい人
- 個別のサポートが必要な人
どのスタイルが良い・悪いではなく、「その親に合った方法で支援すること」を意識しています。
「言われたから」ではなく「自分で納得して」進める
先生たちはサポートを無理に押し進めるのではなく、その親のペースに合わせた関わりを大切にしています。
例えば、お子さんの発達が気になる場合に、先生から療育機関への相談を勧められたとします。でも、受け止め方(感じ方=認知の仕方)は親によってそれぞれです。
- 「そんなこと思いもしなかった!」 → 具体的に伝えてほしかった
- 「認めたくない…」 → 受け入れるまでに時間と心の整理が必要
- 「家族との考えが違う…」 → 夫婦や祖父母との調整が必要なことも
どれも自然な反応であり、最終的には親自身が納得して進めることを先生たちは大切にしています。
ポジティブな気持ち(正のエネルギー)が大事
親自身が「できていること」「うまくいっていること」に気づくことで、自信を持ち、前向きに行動できます。
- 「子どもとの関係がうまくいっている部分がある!」
- 「先生とのやりとりがスムーズになった!」
- 「学んだことを試したら、ちょっとうまくいった!」
このような「できた!」という実感が、「もっとやってみよう!」という意欲につながります。
園の先生が親へのサポートで考えていること
- 事実を伝えることは大事
- できていないことを伝えるときは、配慮や工夫をプラスする
- 「障害かどうか」にこだわらず、今できるサポートを考える
先生がお子さんのことについて伝えようとしていることに、まずは事実として受け止める気持ちを持ってみてはいかがでしょうか。さらに「今、園で先生が工夫していること」を聞いておくと、家庭でも役立つかもしれません。
親の皆さんが「今、どう関わればいいの?」と悩んだとき、
- お子さんのペースに合わせた関わり方をする
- 「言われたから」ではなく、「自分で納得して」進める
- できていることに目を向け、「正のエネルギー」を増やす
この3つを意識することで、お子さんも親自身も安心して成長していけるのではないでしょうか。
まとめ
「こころの発達」は、お子さん一人ひとり違います。
大切なのは、「なぜこの行動をしているのか?」を考え、その子に合った関わり方をすること。
そして、親もお子さんと同じように、感じ方(認知の仕方)が人それぞれです。保育園の先生方も、それを大切にしながら支援しようとしています。
親として「うちの子、大丈夫かな?」と不安になることもありますよね。そんなときは、保育園の先生を頼って一緒にお子さんのことを考えてみませんか?
お子さんの「できた!」「楽しい!」を増やしていきましょう。